大判例

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東京高等裁判所 昭和32年(う)714号 判決

被告人 栗山勇二

〔抄 録〕

被告人の控訴趣意一、医師法違反について(ただし、量刑不当の主張を除く。)及び弁護人の控訴趣意一について。医業とは、反覆継続の意思で、病気の治療を目的に、人の病名若しくはその容体を聴き病状を判断して、これに適当な薬品を与え又はある種の薬液を注射する等の行為をなすことをいい、かような医業を医師の資格がない者がなした場合は、医師法第一七条の違反となるのであつて、行為者が患者から報酬に相当するものを受け取るなど、営利若しくは生活上の資料を得又は研究上の資料を得る目的の有無は、本罪の成立に影響がないばかりでなく、患者が友人、知己など限られた範囲の者で、この行為により患者の身体生命に実害を生ずる結果があらわれなくても、いやしくも行為者において医師の免許を受けていない限り同法条の違反となるものと解するを相当とする。けだし、医業は、公衆衛生に直接関係し、国民の健康な生活を確保するものであるから、法は、医師の免許につき、絶対的、相対的欠格事由(医師法第三条第四条)を定めた上国家試験に合格し、厚生大臣の免許(同法第二条)を要するなど厳重な規定を設けているのであつて、医師でなければ医業をなしてはならないのである。

しかして、本件記録及び証拠を精査し、原判決を仔細に検討するときは、原判示第一の事実は原判決挙示の第一の事実に関する証拠により優にこれを認めることができるのであつて、本件の下山隆治郎その他の被診療者らは被告人の申出により薬価に相当する金員などを支払い、その金額も薬種、薬量に比して決して僅少でないことが認められ、被告人において生活上の資料を得るために、かような医業をなしたものとさえ推認せられるところであるから、原判決には所論のような法令適用の過誤事実誤認等判決に影響を及ぼすべき瑕疵は少しもないので論旨はいずれも理由がない。

(工藤 草間 渡辺好)

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